小説家長野まゆみの
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箪笥のなか [講談社]

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長野まゆみの新境地が、いまここに拓かれる。
古い紅い箪笥をめぐる不思議ワールド

弟は少年のとなりへ布団を敷く。久しぶりに紅い箪笥のそばで眠るのを愉快がる。幼い日の晩のように見知らぬ人物が枕もとに佇つのを期待している。頭からすっぽりかぶる黒い雨合羽を着たその人物は、弟の耳に手のひらをあてた。電車の音が聞こえてきたと云う。小学生だった弟は、怖いだの気味悪いだのとは感じなかったらしい。――<本文より>


『箪笥のなか』2005年9月刊行(講談社刊行)。

画像: 箪笥のなか
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